居住者インタビュー③

居住者インタビュー③

園芸屋「らしく」なくて良い。 2代目経営者は生産者の枠を飛び越えていく。

プロフィール


お名前:麻野間 達矢さん
居住地:駒ヶ原地区(Uターン)
ご職業:有限会社 麻野間園芸 代表

▼麻野間園芸
公式ホームページ
Instagram
Facebook
▼遊べる花屋
Instagram
▼星庭 駒ケ原ガーデンビレッジ
Instagram

設楽町の駒ケ原エリアでもっとも標高が高い場所に位置する麻野間園芸。シクラメンを始めとするガーデニングの定番品種から、多肉植物やめずらしい南米の輸入品種など、その幅広さが魅力の一つです。山の上に広がるビニールハウス群で常時100種ほどの品種を育て、市場へ出荷しています。

現在の代表・麻野間達矢さんは2代目。16歳で設楽町を出た後、カナダ留学や南米旅を経て27歳のときに町に戻り家業を継ぎました。両親が築いた土台は守りながらも、カフェの運営やイベント出展など次々に挑み、駒ケ原に新たな風を吹き込んでいます。

新たにカフェを運営するというのは大きな挑戦だと思いますが、きっかけは何でしょうか?

麻野間さん:現在、利益の大部分を占めているのは市場への出荷です。百貨店や専門店は市場から仕入れ、お客様が店頭で購入する、というのが業界の一般的なしくみ。僕たち生産者には、お客様と直接つながる機会はほとんどありません。それが何だか物足りなくて。この仕事の将来を考えたとき、麻野間園芸とお客様が直接繋がれる場所が必要だと思ったんです。

それで始めたのが「遊べる花屋」(右写真)。僕たちが育てた植物に囲まれながら、コーヒーとスイーツを楽しめるカフェ兼花屋です。もちろん、店内の植物たちはお買い求めいただけますよ。ペット大歓迎・お子さんものびのび遊べます。場所は麻野間園芸のビニールハウスのすぐ向かい側です。この奥地にまで足を運んでいただくために、まずは「麻野間園芸」「遊べる花屋」の名前を知っていただかなくてはなりません。2021年のプレオープン期間には、イベント用に場所を貸し出したり、町外のアウトドアイベントに出展したりとPR活動に奔走しました。(グランドオープンは2022年春を予定)。

カフェの隣でも何やら新しい動きがあると聞きました。

麻野間さん:そうなんです。実は今、庭園も作っているんです。名前は「星庭 駒ケ原ガーデンビレッジ」。駒ケ原の夜はとても星が綺麗なんですよ。それで「星庭」です。歩道や休憩所を整備して、植物好き達が集える憩いの場にしようと考えています。庭園が完成したら、この場所でガーデンウエディングも企画したいなともくろみ中。式を挙げた場所は、ご家族にとって思い出の場所になりますよね。「遊べる花屋」も含め、お子さんを連れて遊びに来ていただいたり、親戚同士で集まる場所に活用いただいたりして、お客様にとって思い出を大切にできる場所になったら嬉しいなあ。植物の生産だけではなく、植物のある空間をコーディネートしてご提供するという新しい道を、今少しずつ開拓しています。

BtoC事業への新たな挑戦、今後が楽しみですね。

麻野間さん:もちろん生産者としての麻野間園芸の強みも伸ばしていかなければなりません。僕たちが取り扱うラインナップには、日本ではなかなか目にしない海外品種があります。たとえば南米に生息する「グンネラ・マニカタ」。世界一大きな葉っぱを持つ品種です。今、こういった”変わり種”の取り扱いを少しずつ増やしています。また麻野間園芸オリジナル品種の開発・流通にも取り組んでいます。こちらはまだ小規模ですが、将来うちの会社を支える事業にまで育てていきたいと考えています。特徴的な品種やうちにしか無い品種に力を入れ、これまで植物に興味が無かった層も、植物マニアの人たちの心もグッと掴みたいですね。

家業は初めから継ぐ予定だったのですか?

麻野間さん:いえ、全く考えていませんでしたよ。むしろ子どもの頃考えていたことは「この町から出ていきたい!」ってことばかり。中学卒業と同時に設楽町を出て、一人暮らしをしながら高校・農業大学校に進学し、その後カナダに1年留学しました。帰国して、就職するにもやりたいことが見つからなかったので、それなら家業をやってみようかと。

きっかけとしては前向きなものではありませんでした。けれどあるとき、自分の中でスイッチが入ったのです。修行を兼ねて東京の園芸店で働いていたときのことです。限定品や希少価値の高い品種がどんどん売れていく光景に非常にワクワクしてしまって。これだ!と。上でも述べた麻野間園芸オリジナル品種の開発です。「うちにしか無い植物を作ろう」と、思いついたら居ても立ってもいられませんでした。育種について勉強するため、その分野に詳しい人を訪ねてエクアドルに発ちました。まず1年間現地の会社で学び、もう1年は南米を旅していました。ひたすら現地の植物を見てまわる旅です。ペルー、ボリビア、ブラジル…。行く先々で多くの植物を勉強できたことが大きかったですね。今、めずらしい海外品種を生産できているのはこの旅のおかげです。

アイデアと、それを実行していく推進力…とにかく麻野間さんのパワーがすごいです。

麻野間さん:考えていることはまだまだあります。うちのハーブを材料にしたスイーツの開発とかね。そろそろ「麻野間園芸って何屋なの?」なんて言われちゃうかも。でもそこまで突き詰めたい。むしろ嬉しい!(笑)。新たな事業に向けて、スタッフの数も少しずつ増やしています。ビニールハウスで植物の世話をする人・カフェや庭園でお客様をもてなす人…皆それぞれ自分の得意を生かせる場所で活躍し、そこで利益を生み、ファンを作り、麻野間園芸全体が成長していく。そうすれば、麻野間園芸としてまた新しい事業にチャレンジできる。その挑戦が駒ケ原に、設楽町にお客様を呼び込み、さらに雇用も生まれ…この場所から、良いことづくしの連鎖が生まれるんです。町で最も高い標高にあり、寒いし、不便も多いのになぜか人が集まってくる。そんな場所になるって考えたら、何だかワクワクしませんか?

いつも頭にあるのは、自分や家族、仲間がもっと楽しく、幸せに過ごすには?ということ。突然思い立ってエクアドルに行ったときも、思い切ってカフェを始めたときも同じです。チャンスを感じたらまず飛び込んでみる。失敗するかどうかはやってみないとわからないですから。このスタンスはずっと変わらないと思います。