居住者インタビュー②
アイデア&巻き込み力で魅力を再発掘。2人が設楽で描く未来図とは?
プロフィール
お名前:戸上 麻美さん
直哉さん
居住地:名倉地区(Iターン)
ご職業:一般社団法人コライフ 代表理事
(「したらオリエンテーリングフェスタ」の運営・「古民家宿&バル てらわき」の運営など)
大学時代にオリエンテーリングというアウトドアスポーツに出会ったお二人。地域おこし協力隊の制度を活用して設楽町に移住し、オリエンテーリングイベントの運営などを通じて町内外に新しい人の流れを生み出しています。地域おこし協力隊の任期終了後も設楽町に定住し、町を盛り上げる新たな取り組みにチャレンジしています。
お二人の活動の軸となる「オリエンテーリング」。どんなスポーツですか?
麻美さん:山林やまちなかに設置されたポイントを通過して、ゴールまでの所要時間を競います。地図やコンパスを使うので、探検しているようなワクワク感があるんですよ。
直哉さん:速さを競うので持久力はもちろん、「どのルートを通れば最短でゴールにたどり着けるか?」といった思考力やとっさの判断力も問われるスポーツです。現在は「オリエンテーリングのまち 設楽町」として全国から人が集う町を目指して、イベントの開催や誘致に取り組んでいます。小中学校の課外授業や遠足にオリエンテーリング体験を提供したりしています。
麻美さん:2021年に開催した「奥三河ほうらいせん2days」では、オリエンテーリングと設楽町の魅力体験をドッキング。オリエンテーリングで汗を流した後に、星空の下でのナイトツアー・地元の有名酒蔵・関谷醸造さんの日本酒と奥三河の食材を楽しむ交流会などを楽しんでいただきました。設楽町でしか体験できないエッセンスをギュッと詰め込んでいます。
直哉さん:「奥三河高原ジビエの森」さんの鹿肉商品、淡水漁業組合さんの甘露煮なども賞品として提供していますが、参加者の方にはとても喜ばれますね。
そもそも、移住先に設楽町を選んだのはなぜですか?
直哉さん:地域に移住しようと考えたきっかけは、オリエンテーリングのイベント運営に挑戦したかったからです。地域おこし協力隊の制度を活用し、そういった活動ができる場所を探していました。
麻美さん:そこでたまたま設楽町を見つけました。この町は傾斜が緩やかな里山に恵まれている、オリエンテーリングにぴったりな場所なんですよ。
直哉さん:「良いじゃん設楽町!」って2人で喜んでいたんですけど、役場に問い合わせたところ、協力隊はミッション型でしか募集していないと言われて。フリーミッション型を志望していた僕たちでは応募できなかったんです。どうしようかと思っていた矢先、担当の武川さんが電話をくださって「何とか来てほしいと思っているから、もう一度詳しく聞かせて欲しい。どうにか枠を作れるかもしれない」と。
麻美さん:オリエンテーリングを軸として活動していきたいこと、イベントを開催し集客を継続できればまちの活性化に繋がることなどお話させていただきました。武川さんをはじめとした役場の方々が動いてくださり、私たちが志望するフリーミッション型の枠を用意してくださったんです。
お二人の熱意が伝わったんですね。
麻美さん:せっかくチャンスをいただいたんだからと私たちもスイッチが入ったんです。
直哉さん:僕たちが住まいに希望していた物件も、当初は購入が条件でした。予算が厳しく「何とか条件を調整していただけないでしょうか」と武川さんに相談したところ、なんと賃貸に変更していただけたのです。きっと持ち主の方に何度も交渉いただいたのだと思います。
麻美さん:あの時期はほぼ毎日の勢いで武川さんに連絡してたなあ。設楽町を見ていたらやりたいことのイメージがどんどん湧いてきて、その思いをしつこいくらい伝えていたと思いますが、嫌な顔せずむしろ良いじゃん面白そうじゃんって、たくさん力を貸してくださりました。
直哉さん:外から来た僕たちの声にこんなに耳を傾けてくださったことが嬉しかったですね。恩返しの意味も込めて、イベント運営などを通じて「また設楽町に来たい」という人を増やしたいと考えています。
「古民家宿&バル てらわき」の活動はどんなきっかけでスタートしたのですか?
直哉さん:オリエンテーリングの活動も軌道に乗りだした頃でした。近所で活動していたときに妻が大きな空き家を見つけてきたんですよ。実は設楽町の空き家の多さは、設楽町に移住してから気になっていたことではあったんです。
麻美さん:ロケーションも良い古民家だったので、町内外の人が集える、バーと宿を兼ねた場所を作ろうということになりました。総務省の「ローカル10000プロジェクト」を活用し、現在はオープンに向けて準備中です(「古民家宿&バル てらわき」2022春頃オープン予定)。
直哉さん:まず、バーと宿のデザインを公募するところからスタートしました。どれほど案が集まるか不安でしたが、なんと東京や九州など日本全国から70ほどの応募が来たんですよ。本当にびっくりしました。
麻美さん:設楽町のことを多くの人に知ってもらいたいと思い、全国からボランティアを募っています。社会人、学生、住んでいる所も様々な人達が、愛知の山奥の設楽町でリノベーションをするって、中々無い光景ですよね。設楽町の大工さんや工務店さんにアドバイスをいただきながら、みんなで作り上げています。
直哉さん:設楽町に移住してから様々な繋がりができました。オリエンテーリングも古民家宿&バルも、活動に興味を持ってくださる方のサポートのおかげで実現できているんです。本当にありがたいです。
これから挑戦したいことはありますか?
麻美さん:ひとつは幼児教育ですね。モンテッソーリという教育方法の指導資格を取得したのですが、その理念に基づいた幼児教具を作りたいと考えています。その材料には奥三河の木材を活用したくて。幼児教育に加えて、木材活用も今後の事業として検討しています。
直哉さん:この地域は大体が人工林で、伐採する時期を迎えています。人工林は適したタイミングで伐採しないと環境破壊に繋がりますし、逆に乱用すると森林破壊を引き起こします。バランスを保ちながら供給できるシステムを作ってみたいです。
麻美さん:奥三河の山林に多いのはヒノキです。香りも良くてアジアでしか育たない品種なので、ゆくゆくは海外にもPRできたら……林業に携わる人の応援にもなるだろうか……なんて、夢は膨らむなあ。古民家宿&バルも木材活用も、いずれは地域の雇用創出に繋げたいと考えています。どんな活動をするにおいても大切にしているのが、「自分たちがチャレンジしたいことと地域貢献を結びつけて考えること」「それを色んな人を巻き込みながら一緒に作っていくということ」。
直哉さん:関係人口を増やすことは、設楽町が持続可能な地域になるために不可欠な要素。持続可能な地域にしたいのは、僕たち2人ともがこの町の暮らしも人も大好きだからです。ずっと続く町にしていくために、これからも僕らの挑戦は続きます。